仰向けのマッサージ
腕のマッサージ
三角筋の施術 |
三角筋は肩を覆っている表層筋で上肢で最も体積が大きい筋肉です。肩関節の外転や屈曲、内旋、外旋などの動作に関わっています。起始部から停止部までを前部・中部・後部と3区分して(3つのラインに分けて)親指以外の4本指を使って圧をかけながら揉捏していきます。この筋肉上には肩ぐうや臀臑、臑会といった経穴がありますのでそれらのツボも併せて押圧致します。パソコン作業や車の運転などで長時間手を前に出した状態を強いられることが多いとこの筋肉の前部繊維が硬直してきます。この部位が縮んだ状態で固まってしまうと肩関節が内旋(内側にねじれた状態)され巻き肩のようになることもあります。 |
上腕三頭筋の施術 |
上腕三頭筋は上腕後面にある強大な筋で、長頭、内側頭、外側頭の3頭から構成されています。長頭は肩甲骨の関節窩結節から起っていて肩関節の動きに関わっています。内側頭と外側頭は上腕骨から起始しているため肘の動きに関わります。三頭とも尺骨の肘頭(肘の尖った部分)に向かって走っています。上腕三頭筋の萎縮する部位は人によってまちまちです。この筋肉は主に肘を伸ばす動きに関わっていますが、長頭に限っては腕を後ろに引く動き関わるので習慣的に懸垂運動や水泳をする方などは長頭が短縮しやすい傾向があります。上腕三頭筋の施術はそれぞれの起始部から停止部にかけて母指に圧をかけながら按摩の要領で左右に捏ねるようにして筋繊維の緊張を緩めた後、母指でお全体的に押圧していきます。上腕三頭筋をマッサージすることで橈骨神経や腋窩神経を介して前腕や肩甲骨周りにもアプローチすることができます。 |
上腕二頭筋の施術 |
上腕二頭筋は肘関節を屈曲した際によく浮き出る力こぶに当たる筋肉のことです。 肘と肩の二つの関節を越えてついている二関節筋であり、肘を曲げる動作や手の平を返す動き、腕を前から上げる動きなどに関わります。 この筋肉は二頭筋と呼ばれるだけあって短頭と長頭の二頭に分かれて走っています。短頭は肩甲骨の烏口突起(鎖骨の下にある突起)、長頭は関節上結節から起始していて力こぶの筋腹を経て橈骨粗面に停止し、一部は二頭筋腱膜に融合していきます。上腕二頭筋のマッサージは腕の内側から手掌圧をかけようとしても反対側に逃げてしまい圧をかけることができないのでお客様の手のひらを上に向けた状態で真上から垂直に手掌圧をかけたり、親指を使って押圧します。揉み方は手のひらが上を向くように手首を固定しながら手掌圧、または併せ母指圧をかけていきます。この筋肉は停止部が前腕まで伸びているので肘を少し超えた橈骨の付着部まで圧をかけていきます。 |
腕橈骨筋の施術 |
腕橈骨筋は上腕骨下部外側縁から起こり、外前方に向って走行して橈骨茎状突起に停止します。肘を曲げたり手の平を上下に向ける動作に関る筋肉で、コップを持って飲み物を口に運ぶ動きやハンマーで釘を打ったり、荷物を持ち上げるために手を握る時などに使われます。腕橈骨筋の施術は母指や四指を使って内側の筋繊維を外側に向けて揉捏したり、左右に揺するようにして緩ませて行きます。この筋肉上には手三里、上廉等の大腸経の経穴が点在していますので、それらも併せてツボ押ししていきます。 |
烏口腕筋の施術 |
上腕の筋肉で烏口突起から起始して上腕骨の内側前面中部に停止する筋肉で肩関節の屈曲や内転に携わっています。この筋肉の緊張によって結帯動作などの可動域が制限されることがよくあります。また、ローテーターカフや三角筋が過緊張状態になると烏口腕筋の負荷量が増加します。この筋肉には筋皮神経が貫通していて肘の上部あたりで上腕外側皮神経となり、前腕外側の皮膚の知覚を支配していますので、烏口腕筋の緊張により、前腕外側の痛みや脱力感などがみられることがあります。烏口腕筋の施術は起始部から停止部にかけての揉捏と押圧によるマッサージに加えて、結帯動作時の伸張動作などによって緊張をほぐしていきます。 |
後頭下筋群のマッサージ
小後頭直筋の施術 |
小後頭直筋は第一頸椎後結節から下降線の内側に付いていて両側が収縮すると頭部を後屈させ、片側が収縮すると頭を同側に回旋させます。施術は背臥位お客様の頸部を軽度屈曲させた状態で後頭骨のすぐ下にてアプローチします。この筋肉は長さが短いため、中指一本にて押圧し、お客様の頭の重みを利用してマッサージしていきます。 |
大後頭直筋の施術 |
大後頭直筋は第二頸椎棘突起から下降線の中間に付着していて両側が同時に収縮すると頭部を後屈させ、どちらか片方が収縮すると頭部を同じ側に回旋させます。施術は仰向け状態のお客様に対して人差し指と中指の二本を使い、起始部から停止部に向かって指を添わせるように斜め縦方向に押圧していきます。 |
上頭斜筋の施術 |
上頭斜筋は第一頸椎の横突起から起こり、後頭骨に停止しています。両側が同時に収縮すると頭を後ろに倒し、片側が収縮すると頭部を側屈させたり、反対側に回旋させます。施術は仰向けのお客様の頭をやや回旋させた状態で、施術者は片方の手で頭を支えておきます。もう片方の手で起始部から停止部にかけて押圧していきます。 |
下頭斜筋の施術 |
下頭斜筋は背部の筋肉のうち、環椎(かんつい)と軸椎(じくつい)の間をつないでいて、頭部の後屈や同側回旋に携わっています。施術は背臥位のお客様の頭を少し回旋させて行います。片方の手で頭部を抑え、もう片方の手で第二頸椎棘突起から第一頸椎の横突起に添わせるようにマッサージしていきます。 |
胸鎖乳突筋のマッサージ
胸鎖乳突筋は首の側面を斜めに走行する筋肉で名前が表すとおり胸骨、鎖骨から起始して乳様突起(耳の後ろの出っ張った骨)で停止しています。仰向けで施術する場合はお客様の顔を少し回旋した状態で行います。先ず停止部である後頭骨周辺(胸鎖乳突筋の後面)に母指圧をかけ、円を描くようにしてゆっくりとマッサージします。次いで停止部四指をあて、頭頂の方へ向けて押圧します。次に起始部と停止部を把握圧迫しながら上下に牽引するようにして胸鎖乳突筋全体を伸長していきます。
小胸筋のマッサージ
小胸筋は大胸筋の外側にあるインナーマッスルで第三~第五肋骨から始まり、肩甲骨の烏口突起までを繋ぐ筋肉です。肩甲骨の下制や下方回旋、外転させる動作に携わっています。また、胸郭を引き上げて息を吸うのを補助しています。
この筋肉は全身の筋肉の中でも硬くなりやすい筋肉の一つといわれていますが、パソコン作業など手を前に出し続けていることでの負担や背中が丸まることでの萎縮が主な原因と考えられます。
小胸筋が短縮委となると肩甲骨が外側へと引っ張られるため、上背部の筋肉が伸ばされ頭が前に出た姿勢になりやすく、肩や首にまで負担をかけることになってしまいます。なので正しい姿勢の維持や肩甲骨の安定のためにもこの筋肉の柔軟性が必要となります。
小胸筋の施術は起始部周辺の鎖骨下外側から停止部付近の肋間部にかけての押圧と共に筋繊維に対して垂直にもみほぐす揉捏法を用いてマッサージしていきます。
烏口上腕靭帯のリリース
肩関節前方のつまり感やつっぱり感のある方への施術になります。烏口上腕靭帯は烏口突起から上腕骨大結節及び小結節に向けて走行し、腱板粗面を補強している組織です。扇状で膜のような構造で他の靭帯の組織とは異なり、弾力性や伸張性があり、拘縮を起こしやすいといわれています。なのでこの組織が硬くなると隣接するローテーターカフの一部や上腕の筋肉の動作の制限に繋がると考えられます。
施術は仰向けの状態のお客様に対して側方からアプローチします。お客様の手首を把持して肩関節を内旋させながら肩甲下筋が収縮するのに合わせて烏口上腕靭帯を外側へ引いて両者の滑走がスムーズになるように誘導していきます。